岐阜脳卒中リハビリテーション研究会
―その拠点は岐阜。  脳卒中リハビリテーションを、“机上の空論”や“小手先のHowto”だけでなく、「機能解剖から臨床応用へ」と繋ぐべく、活動していきます。
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大脳基底核の機能解剖
機能解剖で斬る神経系疾患 中野隆編著 メディカルプレス 2011 P134~
大脳基底核-分子基盤から臨床まで BRAIN AND NERVE Vol.61 No.4 April 2009

の論文等を読み、感じたことをまとめていきます。


一個人の意見ですので、実際の内容とは異なる可能性がございます。
詳細は原著をご覧ください。



大脳基底核は特に被殻、尾状核、淡蒼球、視床下核、黒質、等からなり、脳の深部に存在する神経核群であります。
これらは、運動の制御に大変重要な器官であるにも関わらず、
実際の理学療法場面において着目する場面は少ないように思われます。

その理由の一つに“大脳基底核構造の複雑さ”にあると言えます。

今回は大脳基底核の基本的構造を確認するとともに、
独断と偏見を踏まえ、その理学療法アプローチを構築してみたいと考えています。



Ⅰ.大脳基底核の機能解剖
まず上記でお示しした大脳基底核のそれぞれは、互いに神経線維で結合し、情報伝達を行なっております。
基底核どうしの相互結合は非常に複雑で、成立しうる組み合わせのほとんどが実際に存在しているという程です。
特に代表的な神経連絡経路として、
大脳皮質の運動関連領域から出力された情報は、
大脳基底核の入力部である線条体(被殻・尾状核)に伝達され、
その後、直接路(アクセル)と間接路(ブレーキ)の二手に分かれ、
大脳基底核の出力部である淡蒼球内節・黒質網様部に至ります。
その後、情報は視床へ伝達され、
最終的には運動関連領域へと収束していくことになるわけです。

この経路の途中で直接路(アクセル)と間接路(ブレーキ)の二手に分かれることで、
必要な運動を選択(アクセル)し、不必要な運動を抑制(ブレーキ)することが、
この大脳基底核回路の最大の機能と言え、すなわちこの機能が運動制御を担っています。

ここで重要なのは上記経路を見ても分かるように、外部からの直接的な感覚入力がないのにも関わらず、
「運動制御」を司る器官と呼ばれている、理由です。

一見、運動制御をするのに、感覚情報のフィードバックが必要なのでは、とも思いがちです。
しかし、その機能は基本的に小脳が担い、大脳基底核は別のモダリティを使って運動制御しています。
そのモダリティとは、大脳皮質の前頭連合野、特に前頭前野や、補足運動野に由来する「記憶や予測」情報と言われております。

ここに大脳基底核を考えていく、一つのポイントがあります。
大脳基底核はこれらの“内部(記憶や予測)”情報を元に、運動をシュミレートし、
その中から合目的な運動を選択、かつ不適切な運動を抑制し、
ある意味“無意識的かつ随意的な”運動制御を担っているのです。



Ⅱ.大脳基底核と大脳皮質を結ぶ4つの機能的ループ
この大脳基底核と大脳皮質を結ぶ経路には「4つのループ」が存在していると言われています。
1.運動ループ:
被殻と補足運動野の機能的連結によって、運動の開始・切り替え・終了を随意的に制御しています。
特に外部感覚の直接的入力に依存しない記憶誘導性運動を担っています。また動作の自発性にも関与します。
厳密には運動ループではないですが、運動と関連する大脳基底核の重要な経路として
基底核-脳幹ループがあり、脳幹歩行誘発系(CPG)を刺激して
歩行の自動的な速度・リズム設定を制御しています。
2.眼球運動ループ:
前頭眼野、尾状核、黒質網様部、中脳上丘などの機能的連結が存在し、
基本的には黒質網様部が持続的に中脳上丘(脳幹サッケード機構)を抑制することで、
頻繁にサッケードが起こらないようにしています。
よって眼球運動の統制、視覚的な注意機能に役立っています。
3.前頭前野ループ:
尾状核や被殻の前方と前頭前野、中脳腹側被蓋野との機能的連結により、
特に順序づけられた行動(遂行機能)の制御や、行動の発現や変換(実行と非実行の選別)、
自由意志の決定の制御や報酬予測を担っていると言われています。
4.辺縁系ループ:
側座核と辺縁系との機能的連結により情動を運動へと変換する機能を担っております。



Ⅲ.大脳基底核と運動療法
つまりこれら4つのループが障害されることによって、それぞれ特有の機能障害が出現する可能性があります。
具体的には、
1.運動ループの障害:
動作の開始・切り替え・終了が障害されます。
また自発運動の現象を認め、これは外界からの感覚入力に依存しない内的環境=記憶誘導性運動が
障害されているために、自ら運動を作り出せないためとも考えられます。
基底核-脳幹系の運動制御が障害されると、自動的な歩行のリズム形成がうまく行なわれない可能性があります。
2.眼球運動ループの障害:
サッケード制御の障害と自発的眼球運動の現象が生ずる可能性があり、
注意障害への影響も出現する恐れがあります。
3.前頭前野ループの障害:
運動実行の選別が不適格になったり、
順序だったまとまりのある行為の実行=遂行機能に問題を生じる可能性があります。
また報酬予測の弁別が出来ず、結果的に運動学習の障害が生ずる可能性があります。
4.辺縁系ループの障害:
情動の制御ができなくなり、動作全般のまとまりがなくなる可能性があります。


よって、その運動療法としては、
1.運動ループ障害の運動療法:
記憶誘導性運動よりも視覚誘導性運動(小脳-運動前野)を有効利用し
視覚情報によるモダリティの運動変換を促します。
つまり動作指示は「言って聞かせる」のではなく、「見せてさせる」ことが重要になってきます。
また歩行はリズミカルな運動を失う可能性があるため、
体性感覚を入力するようなハンドリングを用いた歩行トレーニングが有効である可能性があります。
2.眼球運動ループ障害の運動療法:
外的Cueingの有効利用と、外部刺激の少ない治療環境の提供が重要と考えます。
3.前頭前野ループ障害の運動療法:
行為・動作の切り替えが困難になることが予測されるため、
動作手順・時間配分・同時進行を分解した運動療法の提供を図る必要があるように思います。
4.辺縁系ループ障害の運動療法:
獲得したい動作を出来るだけ簡略化した上で、その動作獲得の際には報酬(賞賛)を適切に与え
強化学習を図る必要があります。




脳卒中の理学療法において、その眼に見える運動現象を中心に物事を考えることが、
現在の理学療法の一般的手法であるように思います。

しかし、眼に見えない根底には、そこに脳の損傷があり、
基底核を伴う脳損傷(被殻出血や中大脳動脈脳梗塞)による運動制御の障害が存在し、
運動麻痺の背後に隠れているのかも知れません。

いや、実際にはこの根底にある運動制御の障害が、
より一層運動麻痺を重症化させ、問題点を複雑化させているのだとしたら。




今回は、大脳基底核の機能解剖から運動療法を構築することを試みました。





すべては患者様のために
坪井 祥一
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