岐阜脳卒中リハビリテーション研究会
―その拠点は岐阜。  脳卒中リハビリテーションを、“机上の空論”や“小手先のHowto”だけでなく、「機能解剖から臨床応用へ」と繋ぐべく、活動していきます。
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解説●第12回定期勉強会●
●岐阜脳卒中リハビリテーション研究会主催●
●第12回定期勉強会のお知らせ● ※終了いたしました

【テーマ】
小脳

【日時】
H23年12月27日(火)
18:30~20:30(予定)

【場所】
医療法人社団友愛会 岩砂病院 3Fリハビリテーション室(岐阜市長良福光161-1)

【受講費】
無料

【プレゼンテーター】
坪井 祥一 PT
(医療法人社団友愛会 岩砂病院)

【内容】
いまや脳卒中の運動療法において、欠かすことのできない存在である『小脳』。

これまでの古典的な運動の側面のみならず、近年では認知の側面にも注目が集まっているのは、今や周知の事実ではないでしょうか。

いわゆる“失調症”の固定概念を越え、大脳小脳連関、CCASといったキーワードを中心に、古くて新しい、小脳を深く掘り下げます。

今回は『小脳』について学びます。



【解説】
Ⅰ.小脳の機能解剖
 まず機能解剖学的に小脳の構造を確認する必要があります。MRI画像で小脳を確認すると、大脳皮質の脳溝とは明らかに違う、細かなヒダ状の外観をしているのに気づきます。それだけ、小さな脳器官に豊富な情報処理能力が蓄えられているのでは、と予見することができます。

 臨床的には①小脳半球、②小脳中間部、③小脳虫部の大きく3つに区分することが重要であると考えられます。
 ①小脳半球は大脳皮質との機能的連結により「大脳-小脳」を構成し、四肢の協調性運動、前頭前野のコントロール、運動学習を担っています。
 ②小脳中間部は脊髄を上行する体性感覚情報との連結により「脊髄-小脳」を構成し、体幹・下肢の抗重力姿勢保持や上肢遠位筋の無意識的な屈曲保持を担っています。
 ③小脳虫部は外眼筋や三半規管、前庭系との機能的連結により「前庭-小脳」を構成し、頭頚部・上部体幹を中心とした平衡運動や眼球・頚部の協調性運動を担っています。

 つまり、MRI画像を確認した際にも、小脳半球に損傷があるのか、それとも虫部に損傷があるのかでは問題が変わってくることが予測されます。
 小脳半球に損傷があれば、より企図振戦や測定障害といった四肢の運動失調が生じることが予測されます。一方で小脳虫部に損傷が及べば、よりバランスの不良やめまいなどの、体幹・歩行失調が生じる可能性が高いことが予測される訳です。

 このように機能解剖から、おおよその臨床症状を推測することが可能で、そのアプローチもより詳細なものに近づくことが期待されます。



Ⅱ.小脳の臨床症状
 以上の機能解剖を踏まえた上で、実際の臨床ではどんな症状が具体的に出現するのかが、より重要です。この臨床症状のメカニズムを考察することで、そのアプローチが少しづつ具体的になってくると考えられます。今回は特に重要と思われる3つの臨床症状をpick upし考察してみました。

ⅰ)小脳性運動失調症
 小脳性の運動失調症は大脳の運動感覚関連領域と小脳との機能的連絡の損傷であり、要素的な運動は保たれるものの、それらは円滑でなく(拮抗運動変換不能)、ばらばらで(運動分解)、余分な運動が出現する(近位関節の固定が不良)状況であると考えられます。またその日常行なわれる速い動作は、障害により予測できず不正確(測定障害・企図振戦)となります。

 なぜこのような一見複雑な臨床症状を呈するかを考えてみますと、小脳は動筋や拮抗筋といった各筋群間の調節役(各運動要素の力配分関係をボリューム調節している)を担っているからではないかと考えることができます。
 小脳内部には運動モデルと呼ばれる、運動の「取扱説明書」があると言われ、感覚情報が上行する前に、小脳があらかじめ持っているこの取扱説明書を頼りに、運動情報を大脳皮質へ伝達しているのではないかと考えています。

 これがリアルタイムに入力される感覚情報だけに頼らずとも、運動を予測して起こすことができるメカニズムではないかと考えることができます。その運動はすべての筋群間の力配分が整っていることが特徴で、過去の経験から研ぎ澄まされた、最も最適な運動パターン(フォーム)に基づいて行なわれることに小脳の機能の奥深さを感じることができます。

 これらが損傷を受けることで、その運動は予測した運動を構成することができなくなり、時間的・空間的に最適な運動パターンを行なうことができなくなります。そしてその結果、リアルタイムに入力される感覚入力、例えば視覚情報によってその要素的運動のズレを随意的に補正しようとするため、運動が“行ったり、来たり”し、いわゆる企図振戦、測定障害に繋がっているのでは、と個人的に解釈しております。

ⅱ)小脳性認知情動症候群
 小脳性認知情動症候群は、大脳皮質の中でも特に前頭前野との機能的連結の破綻による認知情動障害であると考えることができます。その臨床症状は小脳の損傷であるにも関わらず前頭前野症状(遂行機能、注意機能、ワーキングメモリ、抑制性制御などの障害)が間接的に出現する状態であると言えます。

 特に前頭前野-小脳系は前頭前野-大脳基底核系と比較し、より外部環境や感覚情報の変化を敏感にキャッチし、その情報に合った行動選択をするよう、中央実行機関である前頭前野を修飾していると考えています(一方で前頭前野-大脳基底核系はより自発的・衝動的な自己発生型の行動選択を担っていると考えています)。
 つまり人と人との関わりの中で社会的に生きている人間は、必然的に協調性を重んじる必要があり、この外部環境の変化に合わせて柔軟に思考や情動を適応させなくてはならない過程に、小脳が前頭前野を協調させているのではないかと考えています。

 これらが損傷されるために、小脳性認知情動症候群では特に感情コントロールに問題を生じ、運動療法展開を難渋させている一つの要因となっていることが予測されます。

ⅲ)小脳性運動学習の破綻
 学習や記憶とは、なにもひとつの局在で支配されているのではなく、複数の領域がシステムとなり担っている機能であると考えられています。特に前頭前野ではワーキングメモリ、海馬ではエピソード記憶、そして小脳や大脳基底核では運動の手続き記憶を主に関わっていると言われています。

 この小脳の手続き記憶は、特に「誤差学習」と呼ばれ、運動の予測(補足運動野・運動前野の運動イメージ)と、その運動の結果から得られた誤差(体性感覚情報等)とを比較・照合し、新たな運動モデルを更新する機能を有しております。この新たな運動モデルがあることで、小脳は大脳皮質へ感覚情報にある程度頼らず、予測した速い運動を行なうことが可能になります。これら小脳内部で行なわれる誤差学習は「小脳内部モデル」と呼ばれる理論にて説明されています。

 これらが損傷されると、運動運動の再学習が円滑に行なわれないことになり、治療効果が持続しにくい、といった状況になってしまうことが考えられます。
 


Ⅲ.小脳のリハビリテーション
 このように小脳は、小脳単独で担う機能がありながらも、大脳皮質や脊髄などと強い機能的連結をし、複雑な情報交換を行なう中で、運動・認知制御していることが分かります。
 
 特に大脳小脳連関の神経経路を丁寧にたどってみると、大脳皮質運動関連領域→内包前脚→大脳脚内側→橋核→(交叉)→小脳皮質→歯状核→(交叉)→視床VL→内包後脚→大脳皮質運動野となり、それは脳卒中の好発部位とほとんど重なることに気づかされます。 これはつまり大脳皮質で起こる多くの脳卒中は、この大脳小脳連関を含む損傷であることが多く、臨床的にも運動麻痺に加え、小脳関連障害も疑うべきであろう示唆を与えてくれています。

 実際のアプローチ戦略と致しましても、機能解剖から考えると大脳皮質の関与を加えることが有用である可能性があります。
 特に小脳の運動のボリューム調節機能は、補足運動野の記憶イメージと運動前野の視覚イメージがefference copyされていることからも運動イメージを豊富に用いた運動の想起、実行が、最適な運動パターンの構成には有用である仮説が立てられます。

 また小脳は、特に感覚情報の能動的な知覚探索に基づく弁別、判断が重要と言われておりますので、運動療法における認知的難易度も丁寧に調節し、左右差の比較、過去との比較、閉眼位・開眼位での比較、それらのエラーの判断などを対象者に求め、実施していく方略も、より望ましいと考えられます。

 さらにそれらを取りまとめる、前頭前野の能動的な注意機能、情報の統合機能も重要で、運動療法を展開する環境も配慮していかなければならないと考えられます。

 前庭-小脳、脊髄-小脳の損傷による体幹失調、歩行失調に対しては、豊富な誤差学習が必要である背景から、運動の課題難易度を丁寧に調節した状態(7/10課題)で豊富な抗重力姿勢課題を導入(前庭脊髄路、網様体脊髄路等はテント化のシステムであり、ある程度、大脳皮質から独立した形で無意識的姿勢制御を行なっている)すること、時にはハンズ・オフトレーニングにて患者様自身にエラー情報を知覚して頂き、誤差学習を活性化させることが重要であると考えています。
 また頚部-眼球運動の協調性を改善させることで、バランス障害の改善を図る様にすることも重要であると考えられます。

 小脳性認知情動症候群に対しては、やはり前頭前野機能(全般性注意・運動のセット・抑制性制御)の評価を能動的(ADL)場面と、受動的(机上検査)場面に分けながら、行動観察を基本に考察していくことが重要であると考えられます。そして認知障害が強く症状として出現している場合には、ポジティブアプローチを優先し、errorless learningが有効であると考えられます。
 

 これらをまとめますと以下のようになります。
①体性感覚入力を豊富にさせる(抗重力姿勢変換)。
②皮質・小脳に上行する運動の結果情報(error)を豊富にする。
③再学習したいスキルのたえに課題の難易度を変化させ適切にerrorを管理する。
④適切なerror learningを豊富に繰り返す。
⑤補足運動野・運動前野からの運動イメージを増加させる。
⑥知覚したい感覚モダリティに能動的注意をむけるよう援助する。



最後に、
 今回の定期勉強会には、外部から約20名もの参加があり、大変ありがたいことだと感じています。
岐阜県だけでなく愛知県、三重県からのご参加も頂き、期待を裏切ることはできないと痛感している次第であります。
 今回実施させて頂きましたアンケートにも、今後当研究会が進むべき道を示してくださる内容が多く寄せられておりました。
参加された先生方には、大変感謝申し上げます。

そしていつも、暖かく見守ってくださる当院の先輩方、多大な協力をしてくださる仲間たちに心からありがとうと言いたいです。


感謝!!

【文責:坪井 祥一】

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