岐阜脳卒中リハビリテーション研究会
―その拠点は岐阜。  脳卒中リハビリテーションを、“机上の空論”や“小手先のHowto”だけでなく、「機能解剖から臨床応用へ」と繋ぐべく、活動していきます。
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言語獲得と理解の脳内メカニズム
言語獲得と理解の脳内メカニズム 乾 敏郎先生 2010
http://www.jstage.jst.go.jp/article/janip/60/1/59/_pdf/-char/ja/
の論文等を読み、感じたことをまとめていきます。

一個人の意見ですので、実際の内容とは異なる可能性がございます。
詳細は原著をご覧ください。



私たちPT、OTは運動療法を実施する際、必ずといっていいほど「コトバ」を用います。

 しかし脳卒中患者、ことに優位側大脳半球に損傷を受けた患者はなんらかの言語機能障害を有していると言われ、私たちが運動療法場面で指示している言葉掛けは、本当の意味で理解されていないように思われます。

 PT・OTが、患者に最も適した言語的教示ができないために、患者は求められている運動を表出することができていないのだとしたら、私たちは自分たちのスキルのなさを棚に上げ、「運動麻痺の重い患者」とレッテルを貼ってしまっているのかもしれません。

 
 そもそも、私たちが「聞いて理解し運動に変換する」といった一連の言語理解・表出過程は
どうなっているのか、まとめてみました。




Ⅰ.単語記憶の座
単語が記憶されている場所はそれぞれ違うと言われています。
動詞(動きに関連する単語)はBA6,44、
名詞(物の名前)は下側頭回領域、
助詞はBA47が担っていると考えられています。
それぞれの領域は、これらの単語を適切な音韻に変換する機能が備わっていると言われております。


Ⅱ.言語獲得
言語獲得に重要な課程として視覚情報と聴覚(言語)情報の統合にあると言われております。
言葉の未発達な幼児(聞き手)は、まず動作を見ることによって、その動作や役割を理解し、
それらの情報をBA6,44に一旦貯蔵します。
その「視覚的状況」が母親(話し手)によって言語的に表現され、
幼児(聞き手)に対して、次々と一次聴覚野から上・中側頭回を経て、
BA45,47へ時系列的に単語が入力されます。
これらはその後、先ほどの視覚情報が貯蔵されていたBA6,44にて統合されます。
このようにしてBA6,44にて母親(話し手)から次々聴覚入力される単語を、
視覚情報から得られた役割に正しく写像できるように学習が進んでいく仕組みとなっている訳です。
これらの学習が進むにつれ(言語の発達とも言える)、言語の格関係が正しく理解され、
BA6,44において各単語のθ役割(統語的意味役割)が付与されると考えられています。


Ⅲ.頭の中の言語
「赤い長方形は緑の長方形の左にある」
といった関係推論において、我々は脳内で空間的イメージを生成し、
かつ操作することができます。
つまり、たとえ目で見えていなくても、聞いたり、文を読んだりするだけで、
その関係性を脳内で言語的にイメージかつ操作できるのです。
これらは後部頭頂皮質や視覚野と運動前野(BA6)の活動において
生成・操作されていると言われています。
言語は実際に話さなくても、脳の中で働いているということを裏づけています。


Ⅳ.視聴覚ミラーニューロン
ミラーニューロンは自分自身の行為と照合することで、
他者の行為を理解していると言われ、行為の照合システムと考えられています。
言い換えれば、ミラーニューロンは他者の行為を、
自己の運動制御システムによって理解しているとも言えます。
このミラーニューロンには、
「視聴覚ミラーニューロン」たるものが存在すると言われています。
視聴覚ミラーニューロンとは音を聴く、あるいは動作を見る、
両者で応答するミラーニューロンであります。
臨床応用できる可能性が示唆されています。


Ⅴ.WHOシステム
ミラーニューロンシステムは自己と他者を区別しないため、
動作主(誰がやっているのか)は別のシステムで特定される必要があると考えられています。
これを規定しているのが後部頭頂葉に存在しているという、
WHOのシステムであります。
確かにBA5,7には自己身体定位や身体図式を司る領域もあり、
WHOシステムの座であることも、頷けます。


Ⅵ.言語のワーキングメモリ
Ⅲ.にて、後部頭頂葉領域と運動前野の活動にて内的空間イメージの
生成・操作ができることは先に述べました。
一方、BA40は音韻のワーキングメモリ課題、および手の運動のイメージ化の
際にも活動すると言われております。
つまりBaddeleyの言うワーキングメモリの音韻ループは
一次聴覚野→ウェルニッケ野→BA40→BA44の
領域にて行なわれていると考えられます。


Ⅶ.言語と運動療法
以上のように運動療法を行なう際にも、言語的教示の方法は
丁寧に行なわれる必要があるように思います。

まとめると、
○BA44,6には動作に関する単語が記憶され、
 同時に視覚と言語聴覚情報の統合もしているため、
 この領域の損傷にて「動作」そのものに関する言語的介入が
 困難になる可能性があります。
○また、運動前野と後部頭頂皮質との脳内システムにて
 空間的イメージの生成・操作をしているため、
 言語を用いて空間的関係を把握することが困難になる可能性があります。
○そして音韻のワーキングメモリとして(一次聴覚野→ウェルニッケ野→BA40→BA44
 のループ)音韻情報をある一定期間保存あるいは運動へ変換する機能を担うシステムがあり、
 このシステムの破綻によって、教示された言語情報を適切な期間覚えていられず、
 結果的に運動への変換を阻害する恐れがあります。


よって、以下の方法論が有効であると考えています。

 直接的な言語聴覚情報が使えないのであれば、他感覚を用い、
言語聴覚情報とは別の感覚情報-運動変換を用いる必要があります。
 すなわち視覚情報(BA17→BA7→BA6)を用い見真似させる、
あるいは動作音(視聴覚ミラーニューロン)を用い聞き真似させる、
体性感覚情報(BA3,1,2→BA5→BA6)を豊富に用いるといった基本的方法です。 
 当然のように言語聴覚情報とは別の経路を通って運動変換されるため、
運動遂行が可能となる可能性があります。
 
 また言語情報を用いるなら、メタファー(陰喩)を用いたり
エピソード記憶を想起させるような手法(海馬→BA44など)を用いることで、
より具体的な運動コントロールを想起させることができると考えられます。
 Baddeleyの言うワーキングメモリのモデルでは音韻ループのほかに
視覚・空間的スケッチパッドとエピソードバッファがあり、
言葉以外の別経路からもワーキングメモリを活性化させる狙いであることが分かります。
 
 さらにワーキングメモリを賦活させ学習効果を高める上では、
トップダウンの注意(BA9)を活性化させることが重要です。




言語的教示を運動療法に生かした方法論は、
我々が言語メカニズムや脳機能システムを理解し得ない状況では
難しく感じます。

しかし、運動療法場面において、
人間であるセラピストが、人に何かを伝える際の「言語」抜きには語れない以上、
言語的教示の手法が運動に与える影響を、
丁寧に行なってしかるべき、と感じました。

ひいてはそれが、
“この患者様には、どうしたら伝わるんだろう”
“どのように接し、関わっていったらよいのだろう”
という、セラピストとしての情熱・マインドに関わるのではいか、
と感じます。

医療職である我々は患者様に対する
いわゆる“声掛け”が、
大切であると教えられています。

言語的メカニズムを熟知し、真の意味で「患者様に“伝わる”声掛けをする」

それは、言語の脳内メカニズムを理解することと同義である、
とまで言うと、これは過大解釈でしょうか。

科学を根拠とするセラピスト(医療職)として、
患者様に真摯に向き合っていく、
その姿勢を忘れずに、治療に専念していきたいと考えています。






すべては患者様のために
坪井 祥一
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